16世紀末から17世紀初頭にかけて、畿内の大名や豪商を中心に流行した茶の湯の影響を受け、美濃や唐津など全国の主要な窯場では、桃山陶と呼ばれるやきものが盛んに生産されました。桃山陶には、茶碗や水指をはじめ茶懐石に用いられる食器類など、お茶の席を彩る多種多様な器があります。中でも、美濃で生産された美濃桃山陶は、中国陶磁の端正な造形を踏襲しながらも独自の変化を加えた黄瀬戸にはじまり、破格といわれる織部に至るまで、色、形、文様などにおいて、それまでにない多彩な表現がなされました。特に志野の誕生によって本格化した文様装飾では、植物や動物、器物など様々なモチーフが描かれ、現代にも通ずる面白さがあります。
文様装飾をはじめとした美濃桃山陶のデザインは、中国や朝鮮だけでなく、当時盛んだったポルトガルやスペインとの貿易により流入した海外の新しい文化からも多分に影響を受けたと考えられます。また、同時代の染織物や蒔絵といった、やきもの以外の工芸品からも共通するデザインをみることができます。
本展では、美濃桃山陶のデザインに影響を与えたとされる当時の世相や流行、同時代の工芸品との共通点とともに美濃桃山陶の多彩なデザインの魅力をご紹介します。