茶の湯の流行に呼応して美濃で誕生した織部。
織部が焼成されたのは、唐津から導入された巨大な連房式登窯でした。
本展では、初期の2 つの連房式登窯「御殿窯」と「元屋敷窯」の出土品を一挙に公開します。
重要文化財公開「元屋敷陶器窯跡出土品展」(第1展示室)
土岐市泉町久尻に所在する国史跡「元屋敷陶器窯跡」の出土品は、平成25年に土岐市所蔵分2,041点、岐阜県立多治見工業高等学校所蔵分390点がそれぞれ重要文化財に指定されています。本展では、第30回織部の日記念事業として、重要文化財に指定されている元屋敷陶器窯跡出土品のうち約80点を公開します。
元屋敷陶器窯跡は4つの窯跡から構成され、安土桃山時代(16世紀後半)に大窯で黄瀬戸、瀬戸黒、志野といった茶陶生産が開始されます。江戸時代初頭(17世紀初頭)には美濃最古の連房式登窯「元屋敷窯」が築かれ、織部が量産されました。
古文書などの記録から、妻木氏が領内の窯業を積極的に支援したことが分かっており、唐津から技術が導入されたとされる「元屋敷窯」の開窯にも妻木氏が影響力をもったといわれています。本展では、古文書にみられる元屋敷の陶工と妻木氏との関係性についてもご紹介します。
企画展『土岐市の古窯-御殿窯-』(第2展示室)
土岐市南部の妻木町には御殿窯と呼ばれる窯跡が所在しています。御殿窯は17世紀初頭頃操業していた窯で、沓形碗や向付、茶入などの茶陶に関わる製品を多数焼成しています。また、同市泉町(久尻地区)の元屋敷窯にみられるような銅緑釉を施した製品はほとんどみられず、志野織部、美濃唐津、美濃伊賀といったいわゆる織部製品を主体に生産しているのが特徴です。
窯は、領主(妻木氏)の館があったとされる場所のすぐ東側に位置しています。妻木氏は、土岐市周辺を治めていた領主で、元屋敷窯が所在する久尻も妻木氏の領内にあたります。
初代当主妻木貞徳の娘が、九州唐津の寺沢廣高のもとへ嫁いでいることから、妻木氏と寺沢氏は深い関係にあったと考えられます。こうした婚姻関係を含めた寺沢氏との様々な繋がりから、当時の最新の窯である連房式登窯を元屋敷窯に導入することができたのではないかと推測されています。
正式な調査が行われておらず、採集資料だけであるため詳細は不明ですが、窯が領主の館のごく近くに築かれており、他の登窯とは立地が異なっています。また、唐津との関係が強い製品が多いこと、消費遺跡からの出土は、館跡を含め北側の士屋敷において多数確認されていることからも大量に流通させることを目的とした製品ではなかったと考えられます。
本展では、これまであまり紹介されることのなかった御殿窯の出土品を展示し、製品の種類や特徴を展観します。