企画展「まさるときつねとこま犬」(第1展示室)
室町時代以降、美濃の地ではやきものの狛犬の生産が行われ、様々な願いを込めた地元の人々の手によって寺社に奉納されました。こうした陶製の狛犬を用いた民間信仰は全国的にみると一部の地域で行われた限定的なものであり、美濃や飛騨、尾張、三河といった東海地域特有の文化といえます。特に、やきものの生産が古代から続く東美濃や瀬戸にその分布は集中しています。
阿・吽の二体一対で奉納された陶製狛犬の容姿は江戸時代になると変化に富み、奉納者、神社名、奉納年月日、作者などが体に刻み込まれるようになります。作者によって特徴的な作風が見受けられるものや、猿や狐の姿でそれぞれ神猿(まさる)、神狐(しんこ)と呼ばれる神の使いとして祀られたものも現れます。土岐市では四対と一体の陶製狛犬が文化財に指定されていますが、本展覧会開催に伴う悉皆調査により70 体を超える陶製狛犬・神猿・神狐の存在を確認することができました。
本展覧会では、陶製狛犬による信仰を紹介するとともに、悉皆調査で明らかになった土岐市に眠るやきもののまさるときつねとこま犬が一堂に並びます。
企画展『土岐市の文化財展Part1 文化財でたどる美濃焼の歴史』(第2展示室)
現在、土岐市には国、県、市の指定を合せて77件の指定文化財があります。美濃陶磁歴史館では、今年度から数カ年にわたり、土岐市にある指定文化財を活用した展覧会を開催していく予定です。
第1回目となる今年度は、1300年の長い歴史をもち、現在も土岐市の地場産業である「美濃焼」をテーマとし、美濃焼に関連する指定文化財を紹介しながら、その歴史をたどってみたいと思います。
土岐市を代表する指定文化財としてまずあげられるのは、国指定史跡「元屋敷陶器窯跡」と重要文化財「元屋敷陶器窯跡出土品」ですが、その他にも、窯跡(史跡)と出土品、伝世する美濃焼、窯の由来を示す古文書など、美濃焼に関連する文化財は土岐市指定文化財の中でも重要な要素を占めています。なぜ土岐市では美濃焼に関連する資料が文化財に指定されるのか、なぜ1300年もの長い間、美濃焼の伝統は続いてきたのか。本展は、その歴史的背景を「技術」と「流通」という2つの側面から探り、現在に続く美濃焼の産地としての多様な姿を紹介するものです。
釉薬の色はどうやって着けられているの?昔の美濃焼はどこまで運ばれたの?伝統工芸の陶芸家はどうやって誕生したの?・・・など、美濃焼のことをよく知らなかった方にも、なるほど!という発見をしながら、美濃焼のことを理解していただける企画展です。