土岐市南東部に位置する曽木町には郷ノ木窯と呼ばれる古窯跡群が所在しています。安土桃山時代から江戸時代前期にかけて操業していた窯で、複数の大窯と連房式登窯で構成されています。発掘調査が行われていないため詳細は不明ですが、焼成されていた製品は時代によって異なり、大窯期には長石釉を施した皿類、鉢類と共に錆釉を施した擂鉢が、連房期には鉄釉や鉄釉に灰釉を流し掛けた碗類、皿類、壺類などがみられます。
本窯の南には名古屋から信州飯田を結ぶ中馬街道が通っており、この街道筋付近に位置する大川古窯跡群・水上向古窯跡群・田ノ尻古窯跡群・猿爪古窯跡群(瑞浪市)は郷ノ木古窯跡群とともに中馬系の古窯跡群を構成しています。製品には、郷ノ木古窯跡群と類似するものが多数認められる一方、各窯独自のものもみられます。他方で中馬系の古窯跡群の北西に位置する久尻地区の古窯跡群(元屋敷陶器窯跡など)では、瀬戸黒、黄瀬戸、志野、織部といった美濃桃山陶を多数焼成しています。このように同時代であっても窯場ごとで特徴ある製品を生産していたことが窺えます。
今回の展覧会では、郷ノ木古窯跡群で焼成されていた製品の種類や特徴を紹介すると共に同時代に稼働していた他窯の製品も展示し、美濃窯における安土桃山時代から江戸時代前期にかけての各窯場の多様性についても紹介します。
左上から
鉄釉天目茶碗/鉄釉茶入
すべて土岐市美濃陶磁歴史館蔵